前回に引き続きコンソール版の7作品を講評していきましょう。前回の記事を未読の方は是非こちらも読んでみてください。
Gul by
作品紹介
From oldschool to new school.
良かった点
手前に古い城門、奥に近代的な大聖堂を置き、それを題名のように名付けるセンスに脱帽ですね。距離と同時に時間の遠近法を感じる一枚で、メッセージ性を強く感じることができます。
改善できる点
モチーフは良いにもかかわらず、奥の部分の町並みにもう少し作り込みがほしかったですね。特にこのような構図の写真が撮れる場所では徹底的に計算された街づくりを行っているはずなので、道路や木の配置にこだわりが欲しかったです。
自然との共生
作品紹介
空を覆うほど巨大で煌びやかなビル群、そしてそれを作る人間様は凄いんだと錯覚してしまいがちですが、そうではありません
どれだけ立派な人工物も、自然があってこそ成り立っています
自然と共に生きていく大切さを切り取った写真です
人工と自然は表裏一体であることを表しています
良かった点
この作品は構図が非常によくできています。3分割構図をしっかりと意識し、配置する物の色合いを計算した痕跡が見て取れるので、絵画的なセンスのある方が撮影した1枚だと思います。
改善できる点
「自然との共生」というタイトルの割りに、目の前に汚水ポンプが大きく描かれているので、「それは共生なのか……?」と首を傾げる部分があります。いっそ木々を全部枯れ木や荒れ地にして、「近代化の代償」といったメッセージにしたほうがメッセージ性が一貫したかもしれません。
遥か静寂
作品紹介
柱や屋根が逆光で暗く成る瞬間を狙い、「美術館の薄明かりに飾られる三対の抽象画」を表現しました。構造物の有るの絵を空虚な絵で挟み、人工的造形を強調させるよう努めました。
人工的造形物など有るはず無いと思う様な所に、人が手を加えた様な形を見い出した時、「人工的」を感じると思いました。
良かった点
スクリーンショットそれ1枚が「絵」であり、その中に更に絵を生む、いわば劇中作のようなメタ要素を散りばめた1枚。発想力と、実際にそれを形にする技術に光るものを感じます。今まで見たことのない試みで、個人的には評価高かったです。
改善できる点
せっかく3枚の作品を並べられるのだから、3枚とも全く別な絵にしたほうがよりインパクトのある作品になったのではないかと感じました。3枚とも違う絵にすることで、絵にストーリーを生むことができます(例えば朝昼夜とか、昔今未来とか)。そこから「人工的」をアピールできれば、唯一無二のテーマ性があったかも。
Salisbury SP4 7DE
作品紹介
悪魔がアイルランドにいる女から石を買い、包んでソールズベリー平原まで運んだ。石の一つがエイボンに落ちたが、残りは平原まで運べた。悪魔はこう言った「この石がどこから来たか誰にも分かるまい。」修道士が応えて曰く、「それはお前が考えていることだ!」そこで悪魔は石の一つを投げつけたので、修道士のかかとに当たった。その石は地面に突き刺さり、今でもそのままなのです。
良かった点
まずは入賞おめでとうございます。現実に行ったことのある場所をモチーフにしていたこともあり、私の中では一番の推し作品でした。シンプルながらとても美しい。感性に訴えかけてくる空の色も素敵です。
改善できる点
極限まで要素を削ぎ落としており、これ以上の足し算や引き算は逆に作品の価値を落としてしまうと思われます。このため、改善すべき点はありません。
都会と空
作品紹介
都会の建物で埋め尽くされている地上と、未だ広大に広がる空を映しました。空を大きめに映してみました。
良かった点
まずはこれだけの大都市を作ったことに拍手。ランドマークとなる建物を配置しつつ、緑も適所に挿入しつつ……と、無秩序ではなく一定の美学と秩序をもって造った街であることがよくわかります。空の広々とした感じもGood。
改善できる点
「三分割法(3分割構図)」で検索してみてください。人が美しいと感じやすい構図のバランスのことで、このような写真であれば街の部分を下3分の1くらいまで伸ばしても良いと思われます。また、コンソール版の空は青一色の写真が多いので、あえて雲をたくさん出したり時間帯を変えたりして空に表情をつけると、他との差別化につながります。
Crop Circles
作品紹介
Circular patterns of stretched grass appearing in farm fields
良かった点
ヨーロッパによく見られる、木々で農地を区切った土地利用の中に、明らかに人工的なミステリーサークルが1つ。見た目のインパクトはもちろんのこと、「誰が?」「何のために?」といった想像を掻き立てる興味深い作品です。
改善できる点
農地は石油、鉱石などで色が変わるため、この仕組みを利用して地面や農地にアクセントをつけても良かったかもしれません。現物のミステリーサークルは農地に描かれることも多いため、あえて木を消さなくても良いかもしれません。また、模様自体に意味を見出すことができないため、生き物やキャラ等、分かりやすい模様にしても良かったと思います。
心霊スポット
作品紹介
テーマ「人工的」から発展させ、「風化していく人工物」である廃墟を中心とした写真構成としました。また、自然と同化していく人工物に超常現象を見出そうとするところが人間の面白いところだと感じているので、これでもかというほどにおどろおどろしくしてみました。
良かった点
題材とその表現方法が素晴らしい作品です。温厚で平和な都市開発ゲームにホラーの要素を混ぜてきた本作は、言うまでもなく斬新な1枚でした。ホテルの廃墟というのも「雰囲気」を出す1枚ですね。その場で見たら悲鳴を上げそうな臨場感とリアリティを感じる1枚です。
改善できる点
とても良くできた作品で、これ以上改善の余地はないと思います。別な方面にアレンジするとすれば、「照明」の追加で面白さをさらに強調できそうです。建物に写すもよし、遠くに人魂のようなものを浮かばせるも良し。今だと「雷が落ちた瞬間を撮った」だけになっていますが、照明などの演出を追加することで、より怖く見える写真になるかもしれません(人工的かどうかは置いておいて……)
講評記載者:神乃木リュウイチ
※講評に対する個別の問い合わせは受け付けておりません。