こんにちは、CSLコンテスト審査委員長の神乃木リュウイチです。
前回の第4回コンテストも、これまでのコンテスト同様、非常に白熱した戦いとなりました。その中でも異彩を放ち、圧倒的多数の票数を獲得した上でPC版1位に輝いた作品「悠久」。
自然が人工を超越した世界を絵画的に描ききった本作品に魅了され、実際に投票した覚えのある方も多いのではないでしょうか。今回はその作者であるうつみさんにインタビューを行っていきます。
この度はインタビューに応じて頂きありがとうございます。あれから少し日が経ちましたが、入賞が決まったときの率直な感想を教えていただけますか?
驚きと嬉しさが同時に来たという感じです。その一方でしてやったり!という思いもありました。作品に自信は持っていたので入賞ラインは行けるのではないかという思いはありました。
個人的な意見ですが、街作りが好きな人って結構な確率で廃墟好きだと思っているので、きっと皆様に刺さるだろうと考えていました。ただ1位という結果は想像していなかったので嬉しかったですね。
ある意味狙い通りではあるものの、1位は流石に予想外だったということですね。ただ作品を見るとやはりそれも納得といいますか、かなりのこだわりが随所に見て取れます。
コンセプトやこだわりのポイントを教えていただけますか?
初参加ということでインパクト重視で、画像を見て「なんだこれは?」となるような作品を目指しました。あとは廃墟を扱った作品なので、ノスタルジーや哀愁を感じさせるような色合いや空気感にこだわりました。
LUTや霞み具合なども本サイトを参考に使っていただいたとおっしゃっていましたよね。正直なところ、空気感をここまで上手く表現できる方がいるとは私自身が驚きでした。
物の配置や色使いも、無造作なようでいてかなり細かな配慮があったように思いますが、そのあたりはいかがでしょうか?
参考記事:霧エフェクトを使いこなしてまるで写真のようなスクリーンショットを撮ろう
はい。本番でも審査員の方から物の配置や色の使い方について言及していただきましたが、作品を作るときに意識しているのは「拡散と集中」です。
実際の街作りをするときにただ漫然と配置するのではなく、建物が密集しているエリアや何もないエリアを作りメリハリをつけることでリアリティが増します。今回の作品でいえば建物や地面を覆う草木も均一に貼り付けるのではなく、密集しているところとそうでもないところを作ったり、手前の花畑も使う花や色を厳選して青色の花をベースに赤白の花をアクセントとして配置しています。
あとは左側の緑に覆われた建物に対して右側には看板が多めの建物を配置したり、水没しているのは手前のみにしたり、くすんだ色の廃墟に対して背景を青空にしたり花を設置するなど、情景のバランスを考えながら作品を作りました。ただ全て計算というわけではなく、自分の好みや感覚的なものに従って作ったのが半分といったところです。
絵画でもよく言わますよね。「密と疎」とか言われたりもします。これをコントロールして視線を誘導できると良いと。こうして聞くと、単純な作業だけで入賞したわけではない裏付けのようなものがよく見えてきます。
技術的な部分もちょっと見てみたいのですが、他のアングルの写真などはありますか?
コンテストに出す画像は10枚程撮影しましたが、これは最後まで悩んだ候補画像です。
構図としてはこちらの画像の方が好みではあったのですが、手前の水没してるところは結構頑張ったのでそこは見せたいと思い出展作品の画像を選びました。
確かにこれも悪くはないですが、確かにコンテストの写真のほうが良いですね。ただこれでも十分すぎるくらいすごいです。シーン全体はどんな感じですか?
全体図です。省エネで奥行き感を出すために道路は途中で曲げて、真横に倒したビルで視線を遮っています。奥のビルは真正面から見た時にバランスが良くなるように配置しているので街としてはめちゃくちゃですね。
おーこれは凄い……。まさに「あの1枚のためだけにある街」という感じがしますね。映画のセットを見ているような気分になります。
制作途中のものです。ここまでの制作時間は1、2時間程です。これ以降は定点撮影→調整を繰り返して作品としての完成度を高めていきました。また制作途中は信号や街路灯の消し方や太陽光やLUTの調整方法など分からないことだらけでその都度調べてました。作成時間よりも調べ物に費やした時間の方が長いです・・・
ここまでで1~2時間というのは凄すぎますね……既に確固たる「こういう作品を作りたい」といった意志がないと、短時間でここまでのものを最大効率で作るのは難しいと思います。普通の街でさえ、漫然と開発するととにかく時間がかかるし、ちゃんとイメージや図、計画を立ててから作ると早めに終わったりもしますしね。
今回の作品を作るとき、何か参考にしたものやモチーフにしたものはありますか?
ありますね。参考にしたのは「東京幻想」と「ニーアオートマタ」です。廃墟をテーマにして作りたいなーと考えていて、確か東京が緑に覆われている作品があったなと思い出し検索をかけて画像を見た瞬間、この世界観を何とかしてCities上で再現したいと思い作品作りを開始しました。
ニーアオートマタはプレイしたことはないけど3D描写が参考になると思ったので色々な画像を眺めていました。画像を見て再現できそうな表現を組み合わせて頭の中に完成イメージを作り、そのイメージ通りになるように試行錯誤しながら作成しました。特に東京幻想さんの新宿や池袋を描いたものやニーアオートマタの廃墟都市エリアからかなり着想を得ています。
取り入れた要素としては建物から流れる滝、傾いた建築物、野生動物、水没した道路等です。逆に道路が陥没して地下鉄が露わになっている表現や廃墟の町並みを見下ろしている構図というものを自分にはできないので諦めました。
ニーアオートマタ……懐かしいですね。徹夜して夢中でプレイしたのを覚えてますよ。翌日仕事なのに(笑)。絵はもちろんのこと、アクションも音楽も本当に最高なので、ぜひプレイしてみてください。
……と話が逸れましたが、実はうつみさん、Citiesを始めてから2ヶ月程度なんですよね?
そのとおりです。厳密にはCitiesを購入したのが去年末で、一通りアセット・MODを導入して1月程遊んでいました。そこから訳あって塩漬け期間を経て4月ぐらいに再開したので、実質のプレイ期間は2ヶ月程度ですね。ただ、塩漬け期間中も構想を練っていたりしたので2ヶ月で0から作り上げたという訳ではないです。
なるほど……とはいえこの短期間でここまで仕上げてくるには、気合だけでなく最短・超効率で色々なものを勉強していく必要があったと思います。参考にしたサイトや動画はありますか?
よく見ていたサイトはCities:Skylines攻略情報wiki、あおくまHouseさんとあるせろいどさんのMOD紹介動画、神乃木さん、うなりさん、やさぐれゆむさんの制作動画はよく見ていました。MOD紹介動画は実際の操作方法や効果まで紹介しているのでとても助かりました。
CSLコンテストのWebサイトではMove It、PO、LUT、霧の記事は非常に参考になりました。How to記事は初心者にはありがたいです。ジオラマプレイが目的なので参考にする動画やサイトもそっちよりになっています。
そういって頂けると大変ありがたいです。このサイトはGatomoさんが毎週泣きながら執筆・編集してるので報われますね。
ゔゔゔ~~😭
ちなみにCities以外の分野では何か活動をされていたりしますか?
鉄道模型シミュレーター(VRM)で10年以上活動しています。そっちの界隈でも私はめちゃくちゃ細かく作り込む人という認識です(笑)。VRMは鉄道模型を再現するのもよし、現実の鉄道風景を再現(私はこっち派)するのもよしと楽しいゲームです。ここ最近はこのゲームで使用できる鉄道車両の3Dモデルを作成していました。
Cities向けはまずは街作りを楽しんだ後に考えます(笑)。
VRMというのは「鉄道模型シミュレーター」のことですよね。まちづくりからモデリングまで全部されているとは恐れ多いです……Cities向けにも鉄道車両が増えると最高ですね。楽しみにしています。
ありがとうございます。
最後になりますが、うつみさんから今後コンテストへ応募する方に伝えたいメッセージがあれば教えていただけますか?
今回このような結果が得られたのも「フォト」コンテストだったからと思っています。これが街作りの優劣を競うマップコンテストなら私の出る幕はありませんでした。あとはゲームの知識や先入観が無い状態で作品作りをしていたのが良い方向に作用したかもしれません。
例えば廃墟化は普通にゲームをしていたらマイナス要素ですが、廃墟を再現したかった私にとっては素晴らしい機能でした。いつもの考え方や視点を変えると新たな発見があるかもしれません。
次回のテーマは「自然」ということで難しいテーマになりますが、皆様をあっと言わせるような作品が作れたらと思います。
ありがとうございました!
以上、第4回フォトコンテスト・PC版の部1位を飾ったうつみさんにお話を伺いました。
インタビューでも感じましたが、入賞するために様々な努力と勉強、工夫を重ねていることがよく分かるインタビューでした。興味深かったポイントはやはり「別ゲームで活動していた」という実績があることでしょうか。
Citiesで得た街づくりのスキルや着眼点というのは別ゲームにも活かせるし、別ゲームで得た知識や技術というのもこのゲームに活かせるという面白い知見が得られたのではないかと思います。
次回のCSLコンテストは「自然」というテーマで9月開催予定です。詳細は7月頃に発表するので、次回もぜひご応募をお待ちしております。
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