作品講評 PC版 その3

作品講評 PC版 その3

「人工的 – Artificial」をテーマにした作品に対し、審査員からの講評を記載しました。最終回となる今回はPC版カテゴリーの9作品を対象です。それでは各作品をみていきましょう。

第4回フォトコンテスト概要

Road Waves

作品紹介
“それぞれ異なる位相と異なる増幅率をもつ、3つの正弦波を描く高速道路を、Light Trail Modを使い長時間露光で撮影した写真です。
人工物の象徴である「道路」・「光」で、人工的な(道路としては無意味な)曲線を描くことにしました。
フォトコンテストということで、CSLで作れる最もミニマルな要素のみで構成した写真を目指しました。”

良かった点

素晴らしい意欲作です。今まで誰も見たことがない表現という点で、間違いなく今回の作品群のうちトップクラスですし、道路と光(車のもの)だけで作られたという点でも、「人工的」というテーマにはバッチリ合致していたと思います。審査員特別賞候補作でした。

改善できる点

審査員特別賞に至らなかった理由は、構成要素の光と道路のうち、道路が道路としての機能を喪っており、もはや人工物としての道路の意味を成していないことが理由です。もしこれが地形に沿った(意味のある)道路だったら、文句なしに審査員特別賞だったといえます。

悠久

作品紹介
“何があったのかは分かりませんがこの街から人々がいなくなって長い時間が経ちました。街からはかつての賑わいは消え、今は自然とともに静かな時間が過ぎています。”

良かった点

一位の入賞おめでとうございます。今回のテーマ「人工的」に対して「人工物と自然」を対比する作品は多くみられましたが、この作品は頂点に君臨する作品。アセットの配置や空気感等の技術的な要素をはじめ、メッセージ性、色合い等どれをとっても「作品」としての完成度が最も高かったです。

改善できる点

改善点は特にありません。次回の投稿も楽しみにしております。

池越え

作品紹介
“私は天邪鬼なので、今回のフォトコンテストのテーマ・人工物と対をなす自然を、画像にどのように織り交ぜるかということを最重要課題として考えておりました。その中で、自然のものでも人工物として捉えられるではないかと思いつき、ゴルフ場をテーマにおいてマップを作りました。一番こだわった点はタイトルにもあるように、池です。”

良かった点

このゲームでゴルフ場を作る人は少ないので、題材として新鮮さを感じました。ゴルフ場は自然を切り開いて作る人工物の極致であり、テーマに対するアンサーとしての納得感があります。水面の管理が難しい本ゲームで非常にうまくまとめています。

改善できる点

画面の大部分を占める池がただの水面で終わってしまっており、全体的に疎すぎる印象を受けます。池に葉っぱを浮かべてみるなどしても良かったかもしれません。また、画像が少し暗め・コントラストが薄めです。LUTの設定を見直しても良いかもしれません。

かつての面影を探す

作品紹介
“廃線跡を作りました。
「まだ残っているころに乗っておきたかった。」と思うやつです。
ぜひ、一両の気動車が走っている様子を想像してみてください。”

良かった点

廃線跡特有の草木の生え方をはじめ、そこに昔鉄道があったことをしっかり感じさせる一枚に仕上がっています。廃駅部分もそれとわかる仕上がりで、時という次元を感じられる良作です。

改善できる点

廃線といえど駅周辺にはいろいろな施設の名残があるかと思います。腕木式信号機の跡などを配置しても良かったでしょう。また、木のバリエーションが少なすぎて山がのっぺりとしているので、別な色や大きさの木の配置も検討を。合掌造りは観光地になりやすいので、廃線になるかどうかも要検討ですね。

休日の立坑

作品紹介
“いつもは轟轟と唸る立坑のワイヤーも今日は静かだ。選炭場のボイラーは火を落とし、石炭列車の汽笛も響かない。木々を吹き下ろす渓風、間をせせらぐ幾春別川。
微かに漂う昨夜の炭の匂いがなければ、奇妙な要塞にも見えてしまう——そんな、炭山(ヤマ)の休日。”

良かった点

入賞おめでとうございます。何度も炭鉱の作品を投稿してついに入賞。今回は「休日」という設定に沿う空気感と、緻密に作られた施設群が目を引きました。日本特有の、そして失われつつある風景を最高のタイミングで切り取った一枚です。

改善できる点

構図、色合い、主題、何をとっても過不足なく、特に指摘事項が見当たりません。

令和の新駅

作品紹介
“とあるローカル線に開業した、真新しい駅を制作しました。
「人工的」ということで、手付かずの森の中に現代風の駅舎が突如現れた、というようなイメージです。
駅のモデルは、茨城県にある某JRの駅です。”

良かった点

海岸沿い特有の、山・道路・線路のセットをうまく再現した1枚。常磐線の日立駅をモチーフにしたと思われますが、絶景スポットにはしっかりとテーブルが置かれる等の細かさがあります。

改善できる点

LUTの彩度が低く、荒涼とした印象を与えるのが残念。「日立駅」を検索すると多くのきらびやかな写真があるので、それを参考に構図ぎめをしても良かったかと思います。ガラスが1枚になっており、縦の仕切りがないのに少し違和感があるほか、手前のバスロータリーに作り込みがほしかったです。

自然に還るまで

作品紹介
“「人工的に作られた」廃墟が、その日をのんびり待っています・・・”

良かった点

バニラアセットに存在する廃工場と草原、山、そして空。これもある意味ミニマリズムで作られた写真ですが、単なるバニラスクショにない訴求力があります。要素を極限まで削っても作品が成立する好例。

改善できる点

草原部分があまりにも平原すぎるので、少しばかり草を生やす、山肌の木も標高別にする、土の色を変えるなど、ステップ気候らしい植生を作ることで生まれ変わるかもしれません。

大自然

作品紹介
“工場に囲まれた人工的大自然。
工場夜景を作ろうとしましたが、自然なものを違和感満載のところで作られたの方が面白いじゃないかな、と思いました。”

良かった点

工場群の中に佇む自然を「大自然」と名付けるセンスが非常にGood。この水はどういう水なのか、そもそも何のために作られた公園なのかと、想像の余地を生むところがこの作品の面白いポイントです。

改善できる点

広角はどうしても普通のスナップ写真のように見えてしまうことも多く難しい画角です。背景の要素と手前の要素をどうしても両方入れたい場合、背景に高低差をつける等することで違和感なく訴求力ある構図を生み出すことができます。

近くて遠い、都市に行きたい。

作品紹介
“このコロナの中、外出が制限されて、閑散としている都市を撮影しました。
イメージは、地方の政令指定都市の駅前です。
のあえて都市機能を動かさないことで、人のいない中心地を作っています。”

良かった点

一回目の緊急事態宣言発令時を思い出す人気の無さで、鮮やかな都市がゴーストタウンと化した違和感をうまく再現しています。歩行者、自家用車、公共交通の動線をしっかり検討して作られたことがわかる駅前の風景です。

改善できる点

高層ビルの間隔があまりにも近すぎるのと、少し密集が過ぎるがゆえに雑然とした感じが出ているのが残念です。デッキに街路灯がない、道路周辺にフェンスがないなどの不足感は、実在の都市を観察することで改善できると思います。


今回をもって講評は終わりになります。ここまでご覧にいただきありがとうございます。ここに記載した講評が皆さんの作品作りのヒントになれば幸いです。

講評記載者:神乃木リュウイチ
※講評に対する個別の問い合わせは受け付けておりません。