作品講評 PC版 その2

作品講評 PC版 その2

「人工的 – Artificial」をテーマにした作品に対し、審査員からの講評を記載しました。前回に続きPC版カテゴリーから7作品を対象としています。

第4回フォトコンテスト概要

釣瓶落とし、なんて。

作品紹介
“雄大な自然の隙間に覗く人工物のアクセント……写真撮りの友人が撮影した紅葉の写真に私は感銘を受けました。
ぜひこの目で見たいと、思い立いたったは翌日。午前のうちに出かけ、山道をひたすら理想の景色を探し……すっかり日が落ちてしまった。
……。
まあ、これはこれでありかも。
路肩で黄昏つつ視界が闇に沈むのを眺める。
まだそんな遅くないのにもう真っ暗じゃない。本当に、よく言ったものです。秋の日は‐‐”

良かった点

作品の良さもさることながら、「写真を撮りに行ったら日が暮れてしまった」が、写真を嗜む者ととしては超あるあるで大変気に入っています。作品も、光を当てる場所(強調したい場所)がきちんと示されており、芸術的にみてもかなり良い作品だと思います。

改善できる点

「人工的」というモチーフに対する訴求が少し弱かったのが敗因ではないかと思います。ただ、これはこれで写真としてはかなり良いと思うので、このまま続けて投稿いただきたいと思っています。

コンテナヤード

作品紹介
“コンテナやそれを輸送するトラックや船舶は人工的に作られたものであり物流そのものが人工的であると考えています”

良かった点

コンテナヤード地区の無機質で荒涼とした雰囲気と、その内部で人が活動している様子の対比が、題材をわかりやすく引き立てている作品だと思います。

改善できる点

写真が逆光になっている点と、手前の交差点に右折レーンが無いなどの小物の作り込みをもう少し行うことで、より訴求力のある写真に仕上がると思います。

計画都市

作品紹介
“碁盤の目状に整備された都市です。
都市の中央には巨大なテレビ塔が設置されており、シンボルとなっています。”

良かった点

非常に整然とした街路の配置と、統一された建物の高さから強く「人工的」を強く感じる都市の1枚。ライブ配信でも申し上げましたが、この構図で見るテレビ塔はビジュアル的なシンボル以上に物語的な意味を持っていそうな気がして、想像を掻き立てられる1枚だと思います。

改善できる点

空の色をもう少しこだわってみても面白かったと思います(雲を浮かべるなども良いかもしれません)。また、建物が一部日本風な割には道路のマーキング等は洋風だったりと整合性が取れていないため、どの国のものなのかを意識してみると良いかもしれません(どの国であっても、路面標示や看板がないということはないと思います)

いろはのつづら

作品紹介
“秋に色づく山腹を通る、いろは坂のつづら折りは、まるで自然に挑む人類の軌跡のようで、まさにアーティファクトだと思います。山奥に佇む巨大ダム、自然に還りゆく廃墟、「人工的」な意匠というのは、大自然の中に在るからこそ輝くのです。”

良かった点

見る目を奪う鮮やかな1枚。第一印象もさることながら、目を凝らしてみてみると、道路にある細かな落ち葉の再現、標高が上がるにつれて進む紅葉、路面標示なども含め非常に細かく作り込んでいることがわかります。現物の写真をしっかり観察し、そこに見出した「人工的」をしっかりと表現できている1枚だと思います。

改善できる点

素晴らしい観察眼と技術力をお持ちのようなので、次回以降もぜひ作品の投稿を。いずれ入選できると思います。

夢の軌跡(あと)

作品紹介
“かつて炭鉱の街として賑わい、人々の夢を載せて行き交った炭鉱列車も、時代の流れには抗えず今は朽ち果てた軌道跡が残るのみ。置き去りにされた廃線路は、過ぎ去りし栄光の日々に想いを馳せながら、ただ静かに佇んでいます。そんな夢の軌跡を、今度は未来ある若者達が歩き出します。新たな夢を紡ぐための未来へと。”

良かった点

まず色彩の使い方が非常に上手いと思います。最近の劇場版アニメに出てきそうな寒色と暖色の混ぜ方、そして線路を歩く学生のモチーフが非常にドラマチックな1枚。上下に黒帯を入れて劇場版タッチにしてみると、よりそれっぽく見えたりもします。

改善できる点

何を持って「人工的」としたのかが、説明文と画像から分かりづらかったのが敗因かと思います。あとはライティングが若干過剰気味なので、奥は寒色で統一、手前は暖色で統一といった具合に、光の取捨選択ができるようになると良いと思います(黄色は不要だったかも)。

水路のある街並み

作品紹介
“水路のある古い町並みをイメージして作りました。”

良かった点

日本の伝統的な町並みを非常にうまく再現しているほか、扱いの難しい水面をしっかりと表現しています。照明の雰囲気も非常に良く、昔から人が手を入れてきた(人工的な)地域を彷彿させます。

改善できる点

写真が暗すぎるが故に何を表現しているのかがパット見で分かりづらいのが敗因かと思います。雰囲気の出る暗さではあるものの、暗い写真は残念ながらなかなか得票しづらいです。昼間や夕方の時間帯、又は夜でも青白い光具合に調整できたら、また別な結果になったかもしれません。

発展途上都市上海

作品紹介
“人工的といえば上海だと思って作りました
(上海にすんでるからなんですけど・・・・・)
この写真はかなりは上海の発展とかなりことなる時系列になってしまいました
ですが上海とわかるように上海タワーや東方明珠電視塔などは建てた状態となっています
少し見にずらいですがクレーンやブルーシートを張っていたりします
今回はかなり気合をいれてみました”

良かった点

上海といえば私が初めて海外旅行に行った場所でもあり、このビル群の並びもよく覚えています。アセットがあるからこそではありますが、都市の景観・風景が非常によく再現されていると思います。上海自体が凄まじい人工都市ですし、人工的な雰囲気がよく伝わる1枚です。

改善できる点

都市の全体図だけで人工的を表現するのは非常に難しかったのではないでしょうか。Dynamic Resolutionsを使うと、ドット感がなくてより繊細な描画が可能になるのでぜひお試しください。また奥のビルがLODになってぼやけているので、Ultimate LODを使ってLODの制御を行うと良いと思います。


講評記載者:神乃木リュウイチ
※講評に対する個別の問い合わせは受け付けておりません。