渋滞対策の事例紹介

渋滞対策の事例紹介

Cities: Skylinesの楽しみ方は千差万別で、ジオラマプレイを楽しむ市長もいれば、水を再生(?)させた街づくりに勤しむ市長もいる。しかし、そんな市長の誰もがぶつかる壁がある。

そう、渋滞である。

交通が麻痺すると都市機能が衰退し、せっかくの素敵な街が台無しになる。それは現実でも同じことで、平成15年度時点で日本全国の渋滞による時間損失が年間約38.1億時間発生しているとの試算もある。そのため、数多くの渋滞対策が実施されてきた。

現実の渋滞対策を都市開発シミュレーションに応用できる部分があると考え、本稿では渋滞対策事例を紹介する。

基本的な渋滞解消方法

渋滞を解消する方法は大きく分けて2つ存在する。1つは交通容量を拡大することである。常に渋滞している箇所への対策や、バイパス構築などが当てはまる。これらはあくまで自動車利用を前提にした解決方法である。もう1つの解決方法は交通需要の調整である。こちらは道路利用の需要自体を調整する施策で、時差出勤や自動車だけでない交通機関の整備を含んでいる。なお、時差出勤のようなオフピークに関する施策はゲーム内で調整できないため対象外とする。

出典:「都市圏の渋滞対策」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/000043136.pdf

ボトルネック解消

道路の一部区間において交通容量が前後の区間に比べ小さいために交通渋滞が発生している箇所をボトルネックと呼ぶ。そもそも、渋滞は一部区間に集中しており。道路延長の約2割の区間で全渋滞の8割が発生している。つまり、ボトルネックとなるこの2割の区間で適切な対処をすることで改善が見込める。交差点や踏切がボトルネックになることが多く、主な対処方法は以下のようなものがある。

  • 交差点の改良
    信号機の設置/撤去/時間調整、交差点形状の改善、道路の拡張など
  • 連続立体交差化
    線路の高架化、オーバーパス/アンダーパスの設置などを主体とした交差点の除去

通過交通の排除

その地域に発着地を持たない、いわゆる通過交通による交通量の増加が渋滞につながる場合がある。東京23区を例に見てみると、6割もの都市環状沿道に用のない通過交通であった。これにより首都高の交通量が増加し渋滞、周辺路線もその影響を受けて渋滞するという悪循環に陥る。

混雑する都心部を迂回するルートとして誕生したのが圏央道である。特に東北道・東名間の乗り継ぎは顕著で、圏央道開通以前は都心経由が9割もあったが、開通後は3割まで減少した。これにより交通分散に成功し、首都高の混雑もましになった。

「圏央道の整備効果」(関東地方整備局 横浜国道事務所) (https://www.ktr.mlit.go.jp/yokohama//02info/pdf/2018/kouka_2018.pdf)を加工して作成

このように環状線やバイパスが渋滞対策に一定の効果を発揮する。CSLにおいても迂回路整備が有効なパターンがある。通過交通はメニューより簡単に確認できるので、チェックしてみてはいかがだろうか。

「交通経路」から通過交通を確認できる

交通需要の調整

複数の交通機関を市民に提供することで、道路交通だけに頼らない渋滞の少ない都市を実現することができるだろう。ここでは日本国内におけるモノレール、バス輸送を活用した街づくりの事例を紹介する。なお、本稿では紹介しないが富山のライトレールの事例も参考になるだろう。

都市交通の課題

現在の都市は、モータリゼーションの進展とともに低密度の市街地がだらだらと広がっている。今後、少子高齢化社会へ突入すると、すべての領域をカバーすることは困難であることから、”中心市街地”といくつかの”拠点”を結ぶ公共交通機関の整備が必要である。

出典:「今後の都市交通施策のあり方(素案)」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/singikai/infra/city_history/city_planning/city_traffic/h18_2/images/shiryou2.pdf

盛岡市オムニバスタウン計画

盛岡市は朝夕の著しい渋滞への対策として以下の施策を実施している。

  • ゾーンバスシステムを採用
    中心街区と郊外バスターミナルを結ぶ基幹バス路線、郊外バスターミナルと住宅地を結ぶ支線バスを設定する方式のこと。
  • 幹線道路のバス専用レーン設置

出典:「今後の都市交通施策のあり方(素案)」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/singikai/infra/city_history/city_planning/city_traffic/h18_2/images/shiryou2.pdf)を加工して作成

これにより、サービス水準と運行の効率化を図ることができる。混雑しやすい中心街区はバスレーンを設けることで定時性が向上、所要時間の短縮が可能になる。また、幹線バスと支線バスを分離することで、郊外住宅地へ充分な運行便数を確保できるなどメリットが大きい。盛岡市ではバス利用者が減少していたのに対して、この施策を実施してからバス利用者数が横這い・微増に転じており実際に効果をあげている。

CSLにおいても、バス自体が渋滞の原因になるケースがあり、ゾーンバスシステムを採用することで運行効率を向上できるかもしれない。

沖縄モノレール

モノレールが完成するまで鉄道がなかった沖縄は自動車が交通の主役である。バス路線網は発達しているが、それでも充分な運行とまではいかず、朝夕はかなり渋滞する。そのような事情を抱える沖縄において、モノレールは一定の効果を示している。モノレール沿線地域に限った話ではあるが、主流であったバスや自家用車での移動からモノレール主流の移動へ変わっている。

モノレール沿線住民の移動手段 出典:「今後の都市交通施策のあり方(素案)」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/singikai/infra/city_history/city_planning/city_traffic/h18_2/images/shiryou2.pdf)を加工して作成

モノレールの良さは既存の道路上に構築できる点にある。バスレーンや路面電車は専用または共用レーンが必要になるため既存の交通容量に制限をつけることになる。しかし、モノレールはそれらの制約を最小限に抑えつつ新たな移動手段を導入できるという点が魅力である。

CSLでは再開発も魅力の一つではあるが、既存の道路を活かしつつも移動手段を確保できるモノレールを活用するのもよいだろう。

おわりに

これまでのコラムでは有料の書籍を中心に紹介してきたが、今回は国土交通省の資料をベースに紹介した。政府が発行する資料は無料で閲覧できる上に、まとまった内容のものが多い。今回紹介した内容以外にも有益な情報が掲載されているため、是非調査し、街づくりに活用していただきたい。

参考文献