CSLプレイヤーに役立つ書籍紹介 -都市の世界へようこそ-

CSLプレイヤーに役立つ書籍紹介 -都市の世界へようこそ-
※本記事は、葛城吉隠氏より寄稿頂いたものを、編集部にて代理掲載しています。

1.序言

 皆様、はじめまして。葛城吉隠(かつらぎよなばり)と申します。YouTubeで細々と実況動画の投稿や配信を行っています。今回、CSLコンテストのコラムに私のような若輩者が寄稿できたことは、感嘆の極みであります。

 本コラムはコンテスト主催者のがともさんが書いていた「CITIES:SKYLINES市長にオススメの参考書籍」の続編の位置づけとなります。しかし、小生としましては、CSLプレイヤーのみならずこのコラムを拝見された皆様を人々が魅了される都市の世界に誘うことが本コラムに与えられた使命であると感じています。そこで、本コラムでは、都市計画・都市デザインにおいて読まれている書籍を1 冊ご紹介いたします。

2. 都市ってどんなイメージ?

ケヴィン・リンチ(丹下健三,富田玲子訳)『都市のイメージ』岩波書店,2007年

 皆さんが考える都市のイメージは、それぞれ異なるかもしれません。複雑な構造のイメージの人もいれば、分かりやすいイメージを持つ人もいます。しかし、そのイメージにおいて、いくつか重なる部分もあると思います。それをケヴィン・リンチはわかりやすくまとめました。この本は、都市計画・都市デザインを学ぶ上で必ず読まれる基本書となっています。それは、この本が書かれる以前の都市計画論が計画者や為政者の目線から書かれているのに対して、この本が都市で生活している住民目線から都市を見ているという出版当時からすると画期的であるということから来ています。そして、ケヴィン・リンチは「分かりやすさ」という価値観から都市のイメージの最大公約数を提示しています。その最大公約数を理解するための一端が、都市のイメージの5つのエレメント(要素)です。

 都市のイメージの5つのエレメントとは、①Paths(道路), ②Edges(縁), ③Districts(地域), ④Nodes, ⑤Landmarksです。ここでそれぞれのエレメントを紹介していきましょう。

①Paths(道路)

 観察者が日頃あるいは時々通る可能性のある道筋とされています。特に特定のパスがイメージの重要な要素となる例を挙げると、ニューヨークのブロードウェイや京都の三条通や四条通沿いがそれにあたります。

②Edges(縁)

 2つの局面の間にある境界であり、連続状態を中断する線状のもの。海岸、鉄道線路の切り通し、開発地の縁や壁などが挙げられています。東京でいうと山手線、大阪の環状線がそれにあたります。

③Districts(地域)

 観察者が心の中でその内部に入ることができ、しかもその内部の各所に何らかの同じ特徴が見られるもののこととされています。これは、京都の田の字地区がそれにあたるといえます。

④Nodes

 観察者がその中に入ることができる重要な焦点のことであり、Pathの接合またはなんらかの特徴の集中によってできたものとされています。これは交差点や地下鉄駅などがあげられます。

⑤Landmarks

 点を示すもので、観察者からは離れて存在し、いろいろな大きさの単純な物理的要素から成り立つものとされています。現実でいう東京タワーや東京スカイツリー、京都タワーがそれにあたります。

3. 都市のイメージから見るCSL

 そこで、ここでは小生がCSLで作った都市を分析していきます。

 小生が現在造っている都市は「金剛市」という名称の都市です。

 この都市は、私が配信で作っている都市で、リンチの『都市のイメージ』を多少意識して作っている都市でもあります。また、この都市では市街化区域市街化調整区域を区別して開発しています。ここでは、特に都市のイメージの5つのエレメントを意識して作った大淀本町を基に説明していきます。

〇大淀本町

 大淀本町は、金剛市の開発において比較的新しい市街地です。この市街地の構造は、いわゆる碁盤目状の都市で作っています。また、三方が河川、山と高速道路に囲まれている土地です。また、6車線道路を中央通りとして配置し、その終点にCSLのマップで時々見られる廃工場を内包して都市公園を配置しています。

 それでは、リンチの5つのエレメントを基にこの地区を見ていきましょう。

①Paths

 大淀本町におけるPathsは、碁盤目状に並んでいる道路や街区の間を走っている歩道となるでしょう。特に地区の始まりから都市公園までの一直線に通る6車線道路は、道幅が広く、複雑になっている交通の流れをまとめています。また、街路樹が連続的に伸びているため、Pathとしてのアイデンティティは特に強いものであるといえます。

②Edges

 次に大淀本町におけるEdgesは、画像でいうと町の上を走っている河川と下を走っている高速道路といえるでしょう。Edgesの特徴は、前述しましたように2つの局面の間にある境界で、連続する状態を中断する線状のもののことです。河川と高速道路は、大淀本町の連続性を断ち切るものとしてはとても強力なEdgesのイメージを与えるでしょう。

 また、連続性の断絶を明確にするだけがEdgesの特徴ではなく、2つの地域をつなぎ合わせるという特徴もあります。その特徴を考えると、中心を通る6車線道路も1つのEdgeといえるでしょう。

③Districts

 3つ目のエレメントのDistrictsでは、6車線道路の下側の区域がそれにあたると考えられます。Districtsの決定的な物理的特徴として、テーマが連続していることです。6車線道路の下側の区域は、テーマとして高密度系の設定を行っています。

④Nodes

 そして、大淀本町におけるNodesは、6車線道路の終点である都市公園や街路樹付き6車線道路と街路樹付き4車線道路の交差点がNodesといえるでしょう。特に6車線道路と4車線道路の交差点には地下鉄駅も配置しており、交通の調子を変えるということから考えるとNodesとしてのアイデンティティが強力であるといえます。

⑤Landmarks

 最後に大淀本町のLandmarksは、都市公園内にある廃工場や4車線道路の沿いにあるウェストミンスター宮殿がランドマークといえます。Landmarksの重要な物理的特色としては、特異性、つまり周囲のものの中でひときわ目立ち覚えられやすい何らかの特徴を有していることです。このことから、廃工場やウェストミンスター宮殿は周囲の建築物よりはるかに大きな建物ですから、特異性があると考えられます。また、リンチによると歴史的な連想がランドマークを強化するのに有力であるとしていることから、廃工場のあった地域が一大工場地帯であったことを連想させることで、Landmarkとしてのアイデンティティを強化しているといえるでしょう。

4. 結びにかえて

 以上から、5つのエレメントから都市を見ることで都市のイメージの一端をつかんだと思います。この5つのエレメントはリンチの考えた最大公約数の都市のイメージを理解する上での一端であり、あくまでも1つの指標でしかありません。なぜなら、エレメント同士の相互作用が存在し、それが良い反応をするのか悪い反応をするのかは、エレメントの配置次第だからです。このことについて話するには紙面が足りませんので、もし知りたい方は、『都市のイメージ』を読んでみて下さい。そして、自分の住んでいる都市もしくは住んでいた都市をこの本を通して一度イメージしてはいかがでしょう。

 最後に、本コラムは序言にてCSLプレイヤーだけでなく、CSLをプレイしていない方にも、都市の世界へ誘うことを使命としてきました。もし、このコラムで何気なく自分が過ごしていた都市について興味を持ちましたら、本コラムの成果といえるでしょう。

 そして、今回このコラムの投稿を依頼していただきました主催者のがともさんに感謝を申し上げます。