Cities: Skylinesの楽しみ方は色々あるだろう。街の発展の様子を眺める。MODやアセットを導入して街のリアルな風景を作り出す。リアルな鉄道を走らせる。整然とした道路を敷く。他にもたくさん。人によって様々な楽しみ方を生み出していることが、このゲームが世界中で大ヒットをした要因だろう。
私はこのゲームの楽しみ方の一つとして、「高速道路の建設」を挙げてみたい。そして今回の記事では、CSLにおける高速道路を建設するときの魅力がどういうところにあるのか、私自身の経験を踏まえながら読者の方々にお伝えしようと思う。これまで私はYoutubeでの実況プレイヤーとして、高速道路を主眼にした都市開発と動画制作を行ってきた。今回はブログ記事として、改めて「高速道路」を中心としたプレイ・スタイルの魅力を言語化してみたい。そして、ゲームプレイをする中でこれまで高速道路の建設についてあまり重要に思っていなかったという方々にも、今後は少しでも楽しみを増やしてもらえたら幸いである。
運輸シミュレーション
CSLを都市発展シミュレーション・ゲームとして遊ぶ場合、街の発展には人やモノの移動がスムースに行われることが重要である。モノは一次産業→二次産業→三次産業へと運ばれ、人は、産業・商業施設への出勤と、消費活動として商業施設や娯楽施設への移動する。道路網とその他の公共交通システムを敷くことによって、こうしたモノと人の移動を活発化させていき、結果として都市を発展させることがCSLが持つゲーム性の一つだ。
街が発展してくると自動車での移動が増え、信号が多く速度制限のある一般道ではすぐに渋滞を引き起こし、人やモノの移動が滞ることによって街の発展も止まってしまう。そこで代替交通手段が必要となる。一つは電車などの自動車ではない交通システムによる大量輸送。もう一つは、高速道路による自動車の高速輸送だ。
CSLは都市開発ゲームの中で、高速道路上での自動車の動きを非常に上手くシミュレートしている。個々の自動車は全て出発地と目的地を持って、前の車両との間隔を守りながら加減速をして進行していく。出発地付近の入口から高速道路に乗り、分岐・合流を正しく渡って、目的地付近の出口から降りる。この単純な動きを、ゲーム上でのおびただしい数の個々の自動車がシミュレートすることで、大きなリアリティが生み出されている。
プレイヤーは、高速道路網によって人とモノの輸送をどのように効率化するかを考える。元々の地形を考慮しながら、最も頻度が高い往復経路を特定して最短経路となるように、しかし街の大規模な再開発を必要としないように建設計画を立てる。忘れてはいけないのが、将来的に開発するであろう地区のことだ。高速道路を建設することによって新しい地区の開発が効率的になることこそ、社会インフラの意義だ。全体のマップを見ながらそんなことを考えて、実際の建設作業に乗り出す。高速道路を建設した後に、自動車の流れや都市の発展状況・統計情報を見ながら、計画と建設は正しかったかを評価する。この計画→建設→評価という一連の作業ができるところに、CSLが持つ大きな魅力がある。
インターチェンジ、ジャンクション
しかし高速道路の建設は、単に道路を敷いて終わりではない。ここで更にプレイヤーは課題が与えられることになる。当たり前のことを述べるが、高速道路を建設する際には、一般道と高速道路を結ぶ必要がある。すなわちインターチェンジ(IC)が必要となる。また、高速道路網が整備されていく中で、高速道路同士を接続する必要がある。すなわちジャンクション(JCT)が必要となる。
ICやJCTを何も意識せずに建設したり、CSLがサンプルとして用意している形状をそのまま使うと、高速の出入口や接続部分がすぐに渋滞をしてしまう状態になる。次にこの渋滞を解消するためにはどうすべきなのだろうと試行錯誤し様々な迂回ルートを作ったりしても、ランプがグチャグチャに絡まりあって結局は渋滞が解消しなかったりする。
ここでプレイヤーはヒントを求め、現実のICやJCTの形状に目を向ける。現実世界で運用されている高速道路をGoogle Mapで確認する。そうすると現実のIC/JCTは様々な種類の形状になっていることに気付く。「トランペット型」、「クローバー型」、「タービン型」、「分岐ダイヤモンド型」…。名前がつき幾何学的な美しさを内包しているものから、類型化されていない特殊なもの、増設を繰り返して複雑にからみあってしまった「スパゲッティ状態」のものなど、多種多様な形状のIC/JCTが世界中に存在していることを理解していく。
ちなみに歴史的には、立体交差を持つIC/JCTは世界が自動車社会に大きく傾いていく19世紀末~20世紀初頭頃に出現し始める。そこから爆発的に増加する自動車運輸の社会のために、IC/JCTは、渋滞解消や建設費抑制のために、高速道路建設という土木工学分野の研究の中で様々な形状が考案されてきた。
Cities: Skylines上でIC/JCTを再現する
ではCSLに立ち戻ったとき、過去の研究の集積としてのIC/JCTの形状をゲーム上でシミュレートしてみたくなる。例えば、CSLのサンプルとして用意されている4方向の「クローバー型JCT」を設置して渋滞が起きていた場所に、代わりに「タービン型」を建設してみる。するとどうだろう。渋滞していた自動車の列がスムースに流れ出すことになった。クローバー型は、自動車が減速する要因となる「織込交通」が発生する形状だ。しかしタービン型では織込交通の構造を排除しているので自動車が方向転換する場合の減速が起こらないのである。また建設用地もタービン型の方が小さくなるだろう。
また効率面を良くすることだけではなく、自動車の流れを視覚的に眺めているだけでも面白い。自分が敷設した複雑な構造や複数の方向転換を必要とするIC/JCTを、自動車の列がクネクネと進んでいくさまは、少なくともいま時点では他のゲームで味わうことができない楽しさだ。
ゲーム・プレイヤーから”Roadgeek”に
こうして私を含めたCSLの多くのプレイヤーたちは、高速道路、特にIC/JCTの改良や創作の面白さに気付いていく。CSLプレイヤーの中には、IC/JCTの建設自体を目的としてCSLをプレイしている人たちも多くいる。始めは街を発展させるという目的のもとで、渋滞解消をしようとIC/JCTの建設を工夫をしていく。しかしそのうちにIC/JCTをいかに面白い形状で建設するのかということ自体が目的になってくる。誰も作ったことが無いマイナーで変わった形状のIC/JCTを作ったりしていくうちに、IC/JCTへの造詣が深くなり、英語で言うところの”Roadgeek”(「道路マニア」)を生み出したりしてくのである。
尚、CSLを利用してIC/JCTの種類ごとの効率性や方向転換の動作をまとめている以下の動画は非常に有名だ。これを見ても、IC/JCTの形状によって効率が大きく変わることと、CSLが高速道路における自動車のシミュレートをいかに上手くやれているか、という2つがわかる。
Traffic flow measured on 30 different 4-way junctions
結びにかえて
今回は高速道路を中心とした街作りの魅力の話から、IC/JCT自体を楽しむことまで触れて書いた(書いてしまった)。とにかく、「高速道路シミュレータ」としてのゲームの遊び方は、Cities: Skylinesの登場によって切り開かれた新たなジャンルと言える。
これを最後まで読んだあなたも、ぜひ地図アプリで高速道路のルートや出入口の都市周辺、そしてICやJCTの形状を見て、CSLという類稀なるゲームで再現してみてはいかがだろうか。